Curation2

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ろう者の作家2人によるコラボ展示
プロデューサー:地場 賢太郎

2018年  2月 12日(月・祝) - 2月24日 (土)
休館日:2月 19日(月)
11:00-20:00
レセプション:2月17日 (土) 17:00〜

会場: Art Lab Akiba

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オブジェクト/イメージ/ノイズ

 オブジェクトとイメージがそこにある。オブジェクトが先にあるのか、それともイメージが先にあるのか。実体的なものと非実体的なものを分け隔てすることなく全てをひっくるめて視覚そのものだけを経験することから創造行為が始まる。リュミエール兄弟が撮影現場でファインダー越しに覗いた風景とスクリーンに投影された風景は同じ運動イメージであっても同じではない。スクリーンのイメージはオブジェクトそのものが表層的に切り取られた、たんに視覚表象として動いているだけである。リュミエール兄弟は音声トラックのないフィルムであるがゆえに、そのギャップと不可解さを抱えながらオブジェクトとイメージのあいだを行き来していたのかもしれない。ギャップを有することなく、視覚を主体とした身体感覚でのみ、オブジェクトとイメージのあいまいな関係を捉えるとするならば、どのような世界が出現するのだろうか。オブジェクトとイメージはどちらかによって覆われているのか、それとも互いがぶつかりあっているのか。異なる領域の界面にはノイズが発生する。2人の作家によるコラボではあるが、それぞれの作品がオブジェクトとイメージのあいだで解体され、作家の固有性が前面化されるまえに別次元の異質な何者かがノイズをともなって生まれてくるはずだ。そのノイズはマテリアルの接触不良によるのか、混沌としたイメージによるのかは全くもってわからない。(佐藤譲二)
 


佐藤譲二
1972年生まれ。1997年、東京造形大学美術部美術1類卒業。自身撮影の写真やネット画像の組み合わせによる重層的な映像イメージを絵画イメージに置き換えた作品を制作している。

JJ’s eyes

https://www.facebook.com/profile.php?id=100014559126016


佐藤譲二 作品


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神津裕幸
1970年生まれ。2000年東京芸術大学美術研究科博士後期課程修了。「境域」を主題とし、、平面、立体、インスタレーション、映像など様々な作品を制作している。舞踏家「雫境(DAKEI)」としても活動している。

https://www.facebook.com/shizuku.dakei?pnref=lhc.unseen



神津裕幸 インスタレーション


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「ノイズ」と「境域」

 本展のアーティストである佐藤譲二、神津裕幸は二人とも自分自身を、固定的な存在としてではなく、移ろい行く現象として捉えているのだと思います。しかし、この二人のアーティストにとってその移ろいは水の上の泡沫の様に儚く頼りないものとして捉えているのではなく、むしろ、主体的な行為の連続の中で、自己存在を際立たせ、実体化させている様に見えます。
 佐藤譲二にとっては芸術表現とは異質のものを組み合わせたり、ぶつけることで、異質なもの同士の境界で発生する、マテリアリスティックで、時に耳障りなノイズを発生させる行為ではないでしょうか。一方、神津裕幸にとっては、自身の生涯のテーマである「境域」を表現することは、二 つの領域の境目に同時に足をかけ平衡を保ちながらも、展開させ前進して行くことであり、命を賭した行為に他ならず、これは舞踏家、 雫境として踊る時と同様な態度ではないでしょうか。
 以上の様に、この展覧会の主題は、二人にとって個人的必然であると同時に普遍的であり、またアートそのものについての考察でもあるでしょう。なぜなら、アートと自分自身についての考察でもあるからです。  今回の展覧会はそれぞれが追求して来た自身の「境域」と「ノイズ」を更にお互いに重ね合わせ、フィードバックさせることで、「境域」を広げ、新たな「ノイズ」を発生させようとする意欲的な実験場になります。また本展覧会のコーデイネターとしての個人的見解としては、この二人のアーティストがともにろう者であるが故に、「境域」や「ノイズ」の未知な局面、そこではすべてのアーティストが「ろう」「聴」の別なく議論し、交流出来る可能性を提示してくれるのではないかと期待してお ります。

   地場賢太郎 

  アートラボアキバ Art Lab Akiba www.art-lab.jp

  〒111-0053 台東区浅草橋4-5-2 片桐ビル1F tel: 090-8031-4711